メイキング『悪と戦う』まとめ 2

@takagengen

今日の予告編1 今日、子どもたちは、奥さんに連れられて、多摩センターまで、奥さんの友だちのバンドの野外ライヴに行ってきました。ロック+パンク+ジャズなんだけど、しんちゃんはおおいに「ノッテ」、頭をふって楽しんでいたそうです。疲れたんですね、さっき寝かしつけたら5分で爆睡でした。
予告編2 今晩は、写真と小説、それから、小説につきまとう「真実でなければならない」という幻想の理由について話すつもりです。まだ一度も書いたり話したりしたことがないことが多いので、うまくいくかどうかわかりません。でも、いいでしょう。ダメだったら、またやってみるだけの話です。 4:28 AM May 9th webから
予告編3 それから、きわめて個人的なことも一つ話したいと思っています。でも、しないかもしれない。スタートは決めていますが、どういうルートをたどり、どんな結末になるかはわかりません。おそろしい、でもわくわくするような感じです。確かに小説を書く時と似ているかもしれないな、では24時に 4:32 AM May 9th webから
メイキングオブ『「悪」と戦う』9の1 久しぶりにスーザン・ソンタグの『他者の苦痛へのまなざし』を読み返して、以前読んだはずなのにすっかり忘れていたことにぶつかった。それは、ロベール・ドワノーの写真に関するエピソードだ。それはたぶん誰でも一度は見たことのある、ものすごく有名な写真。 5:02 AM May 9th webから

メイキング9の2…パリの街頭で、若い恋人たちが口づけを交わしている。左側の女の子は軽く半身で上を向き、右側の男は、カメラに正体するように体を向け、女の子に口づけ中。そんな二人だけの世界に入った恋人たちと無関係に、通行人が歩いている。右端の通行人はカメラがぶれてはっきり映っていない 5:05 AM May 9th webから
メイキング9の3…世界中で「パリの恋人」として知られたスナップ写真が「やらせ」だとわかったのは、撮影されてから40年後のことだった。もちろん、その写真を愛した人たち(ぼくもその一人)、はガックリした。「ほんとう」だと思っていたのに「うそ」だったから。写真自体には変わりがないのに。 5:08 AM May 9th webから
メイキング9の4…キャパのあまりにも有名な「崩れ落ちる兵士」だって、それが演出だとしたら、意味も価値もぜんぜん違ってくるだろう。写真に変わりがなくても。報道写真だから「事実」として受けとるのは当たり前じゃないかって? でも、ある時期まで、報道写真の多くに「演出」が入っていたのだ。 5:11 AM May 9th webから
メイキング9の5…写真を前にした時ぼくたちは、写真を見ているのではなく、もしかしたら、そこにあるはずの「真実」を見ようとしているのかもしれない。見たいのは、その映像ではなく、それが「真実」であるという確証なのかもしれない。でも、詩を読む時、書かれていることが真実か気にするだろうか 5:14 AM May 9th webから
メイキング9の6…映画を見て、どこにこの監督の生の真実があるか考えるだろうか。絵や彫刻を見て、その作者の生涯の隠された真実を探そうと試みるだろうか。でも、写真の前で、まず、ぼくたちは、「真実」かどうかを確かめる。そして、小説を読む時にも。もちろん、あらゆる小説を、ではない… 5:16 AM May 9th webから
メイキング9の7…あらゆる写真を、ではないようにだ。小説はフィクションだ、ウソだ、作り物だ、そんなことはわかっている、と言いながら、でも、そこになにより「作者の真実」を見たいと思う強い気持ちは残り続ける。なにより、小説家たち自身がそのように実践してきたのだ。『舞姫』は鴎外の…… 5:19 AM May 9th webから
メイキング9の8…苦しい恋愛のドキュメントだし、漱石の作品の大半は彼自身の苦しい三角関係を描いた(と主張する人は多い)。「私小説」などという、ほとんどノンフィクションのような小説のことを考えずとも、そこに「真実」がある、という視線から、小説は逃れることができない。なぜそんなこと… 5:22 AM May 9th webから
メイキング9の9…が要求されるのだろう。ぼくは思うのだが、それは読者が不信に満ちているからではないだろうか。美しい物語を作る、血沸き肉踊る物語を作る…それだけでは駄目なのだ。読者はもっと多くを作者に要求する。作者が保持している、作者が隠している、彼(彼女)だけの真実を提供せよと。 5:26 AM May 9th webから
メイキング9の10…作者に「犠牲の子山羊」を提出せよと迫るのである。それはなぜだろう。「個」という、逃れることができない場所にいる読者は、ただでは、小説という「公共空間」には踏み出さない。そんなものが信用できるか。ぼくに読んでもらいたいなら、おまえのもっとも大切なものを出してみろ 5:29 AM May 9th webから
メイキング9の11…そう読者は作者に迫る……ところで少し話を変えてみたい。この話が繋がるかどうか、ぼくにもわからないけど。少し前、このツイッター上で、小さな、個人的な事件があった。数時間、ぼくのアイコンを、息子のしんちゃんに変えたのだ。すると、娘の麻里ちゃんから厳しい指摘があった 5:33 AM May 9th webから
メイキング9の12…自分の意思を持てない幼児の写真をいろいろなリスクがあるのに載せるのは反対、と麻里ちゃんはいった。まったくその通りだとぼくは思った。120%、それは正しい。だから、ぼくはアイコンを戻した。だが、120%間違っていると思いながら、どうしても言いたいことがあったのだ 5:35 AM May 9th webから
メイキング9の13…アイコンに自分の子ども(娘)を使っている人がいる。東浩紀さんや宮台真司さんがそうだ。ぼくはそのアイコンを見る度、不思議な感覚に襲われる。あれは、もしかしたら、追悼の写真ではあるまいか。なぜなら、追悼の写真に使われるのは、その対象のもっとも美しい写真だからだし… 5:38 AM May 9th webから
メイキング9の14…もっとも美しく、過ぎ去ってしまえば戻らぬ瞬間を惜しむ気持ちとは、その季節への追悼だ。そして、その写真の真っ直ぐな視線には、撮る側の愛情も映し出されている。その時、ぼくたちは、また、写真の向こうに「真実」を求めてようとしているのだが、それはその写真が「真実」を… 5:41 AM May 9th webから
メイキング9の15…匂わせているからに他ならない。だから、あの、子ども(娘)のアイコンは、「愛」に関する「私小説」と同じ構造を持っている。そして、ぼくたちがそのように受けとることができるのは、「作者」が、あえて危険を省みず、娘(家族)を差し出している(ように見える)からなのだ… 5:44 AM May 9th webから
メイキング9の16…それがどのようなものであっても、そこに「真実」を見つけ出そうとするほどに、ぼくたちは病んでいる。しかも、それは逃れることができない病であるように思われる。だから、ぼくは、間違っているはっきり知りながら、なんの権利もないのに、一枚の写真を使いたいと思ったのだ… 5:46 AM May 9th webから
メイキング9の17…そのようにして、多くの「私小説」が書かれて、「私」はもちろん、「私」の近くにいる人々が、小説の中に投入された。そのやり方でしか「真実」が担保されないとはぼくは思わない。その多くが無残に終わったことも、中途半端な気持ちで、事実が消費されたことも知っている。だが… 5:49 AM May 9th webから
メイキング9の18…それが、小説という世界を成り立たせる必須の貨幣である場合もあるのだ。そのことによって、ぼくは、子ども(家族)を、戦場に連れ出してしまうかもしれない。そうしない、と断言することはぼくにはできない。小説家の多くは、みなそういうだろう。だが、と思う。それが…… 5:52 AM May 9th webから
メイキング9の19…勘違いでないなら、連れ出された子どもが、どんな表情であるかを見てほしいと思う。いや、あのアイコンの写真を見てほしい。あれは「愛されている子ども」の写真ではないかと思う。だから作者は、渾身の力をこめて、その子を守るだろう。守りつつ、その戦場で、読者という孤独な… 5:55 AM May 9th webから
メイキング9の20…存在への関与も止めないだろう。両立させることは不可能なのかもしれない。それは周りに迷惑をかけるだけなのかもしれない。それにもかかわらず、作者は、止めないだろう。一枚の写真を高く掲げ、前に進むのである。バカだな……今日はここまでにします。聞いてくれてありがとう。 5:59 AM May 9th webから
どちらも、いま話したことに密接な関連があると思います。 RT @dice_que 今夜も高橋氏@takagengenのツイートを読む 無修正ビデオを見るときの気持ちとか大江健三郎のこととか考えた 6:12 AM May 9th webから
もちろん、ツイッターのアイコンは「イコン(聖像)」を思い出させますね。 RT @dzna @takagengen 今回のツイートは、アイコン=イコン(聖像)というそもそもの意味にあてはまるような 6:41 AM May 9th webから
ぼくも名前には苦労します! ふつうの名前では書けません。 RT @k6ou @takagengen 僕は小説を書こうとすると、いつも名前でつまづきます。代名詞なら気にならないのに、キャラクターに名前を与えた途端全部がウソに思えてしまって。高橋さんは名前ってどう思いますか? 6:45 AM May 9th webから
現実的な名前をつけられるようになったのは最近です。 RT @num_16 @takagengen あ、名前についての話面白そうですね。小説の人物名は現実に親のつける名前と違いがありますよね? 6:56 AM May 9th webから
では、そろそろ、子どもたちの間にもぐりこんで眠ることにします。じゃあ、次の24時に。みなさん、おやすみなさい。 6:59 AM May 9th webから
今日の予告編1 今日は子どもたちはふたりとも秒殺で寝てしまいました。忙しかったのでしょう。明後日に迫った遠足で持っていくのは「ウルトラマン弁当」か「ゴセイジャー弁当」かでおおいに悩んでいるようです。でも、いまはもう夢の世界に入ってしまいました。そろそろ、パパは「路上演奏」の時間。 4:22 AM May 10th webから
予告編2 今日は、読者の話をしたいと思っています。作者がいて、小説を書き、それを何百とか何千とかあるいはそれ以上の数の読者が読む。それがふつうです。というか、ぼくたちはそれをふつうだと思っています。しかし、中には、読者がひとりしかいない作家。読者がひとりもいない作家もいます。 4:24 AM May 10th webから
予告編3 では、そういう作家はつまらない、とるに足らない存在なのでしょうか。なぜ、読者がひとりもいなくても書くことができるのでしょうか。もしかしたら、それこそが理想の関係なのかもしれないと思うことがあります。そのことをうまくしゃべれたらいいなと思っています。では、24時に路上で。 4:27 AM May 10th webから
メイキングオブ『「悪」と戦う』10の1…伊藤整文学賞を受賞した宮沢章夫さんの『時間のかかる読書』はたいへん奇妙な本です。というのも、横光利一の『機械』という、原稿用紙で50枚ほど、一時間もかからずに読める短編を、実に11年もかけて読んだ記録だからです。なんという愚行でしょう! 5:01 AM May 10th webから
メイキング10の2…ぼくだって「全文引用」なんて馬鹿なことをしますが、さすがに宮沢さんにはかなわないと思ったのでした。そして、同時にこの宮沢さんの「愚行」にはきわめて正しいなにかがあるとも思ったのです。ぼくたちは通常、作家が何年もかけて書いた小説を半日で読んで、当然だと考えます。 5:04 AM May 10th webから
メイキング10の3…しかし作家が3年かけて書いた、ということは、彼はその作品を3年「読んだ」のです。3年かけて読まれた作品と、半日で読まれた作品は、たとえ同じ言葉が書いてあったとしても別物ではないかとぼくは思うのです。そして、時には、3年かかった作品は3年かけて読むべきだとも。 5:07 AM May 10th webから
メイキング10の4…いや、ぼくだってそんなことはしません。そんな時間はないのですから。なのに、宮沢さんは、25頁ほどしかない短編を(作家によっては一日で書いてしまう量です)11年もかけて読んだ。おそらく、宮沢さんは、作者の横光利一が見たのよりもさらに豊かな風景を見たはずです。 5:10 AM May 10th webから
メイキング10の5…ぼくが言いたいのは、もし横光利一が生きていたら「ぼくには、少なくともひとりは読者がいた!」と言ったのではないかということです。ただ「読む」のではなく、その先にまで進んでくれる読者が、と。それは、なんというか恐ろしく孤独な読者ではあるのですが。そして、ぼくは別の 5:14 AM May 10th webから
メイキング10の6…ある、極めて孤独な小説の書き手を思い出したのです。それは、数年前にドキュメンタリー映画が公開されたヘンリー・ダーガーという老人です。ダーガーは1892年にシカゴに生まれ1973年に81歳で亡くなりました。17歳から亡くなる直前間まで彼は病院の掃除夫でした。 5:17 AM May 10th webから
メイキング10の7…晩年の40年間、彼は6畳ほどしかないアパートの一室で誰にも知られず創作活動を行っていました。無口で独身で友だちもいない、病院とアパートを往復するだけで半世紀を過ごした彼が亡くなった後、ゴミで埋まった部屋から膨大な数の絵と途方もない長さの小説が見つかったのです。 5:20 AM May 10th webから
メイキング10の8…彼の凄まじい絵のはやがて「アウトサイダーアートの傑作」として知られるようになります。しかし、ぼくが魅かれたのは『非現実の王国』と題された、計算すると、長編小説75冊から150冊分ほどもある、天国的な長さの小説の方でした。どんな人間がそんな無謀なことをできるのか 5:29 AM May 10th webから
メイキング10の9…もちろんそんな長さのものは出版されてはいません。一部が彼の作品集の中で読めるだけです。それを読むと、読者は不思議な感覚に襲われます。いったい、発表のあても、つもりもなく、このような異様な(戦争)小説を書けるのだろうか、と。ダーガーは狂っていたのでしょうか。 5:32 AM May 10th webから
メイキング10の10…ある意味で彼は狂っていたのです。しかし、ある意味で、彼は、その過酷な生涯の中で、狂わずにいるためには、小説を書き続けるしかなかったのです。彼が生きたのはインターネットもなかった時代でした。というか、彼には、犬を飼うために必要な月に2$の金もなかったのです。 5:35 AM May 10th webから
メイキング10の11…彼は完全に孤独でした。彼が創作をしていることを知っている人間さえ生前には皆無だったのです。しかしそれにもかかわらず、彼は狂わずに小説を書き続けた。自分という読者に向かって? そうともいえます。いや、そうやって、わかったつもりになるべきではないのかもしれません 5:38 AM May 10th webから
メイキング10の12…フランツ・カフカは亡くなる前、友人のマックス・ブロートに全著作を燃やすよう遺言したとされています。しかし、ブロートは、カフカの言いつけを守らず、その結果、ぼくたちはカフカの作品を読めることになったのです。実際、カフカは本気でそんなことを言ったのでしょうか。 5:40 AM May 10th webから
メイキング10の13…カフカは「本気」だった、とぼくは考えています。彼は「書く」だけで充分だと考えていた。それが結果として、この世界に残り、読者に読まれる必要さえ彼は感じなかった。なぜなら、彼は、彼の作品を書いているその瞬間、瞬間に、「読者」の存在を感じていただろうから、です。 5:43 AM May 10th webから
メイキング10の14…たとえば『変身』を読んでください。主人公のグレゴールはある日突然「虫」になる。おそらく、「虫」になった人間はグレゴールだけです。『変身』は、世界でただひとり「虫」になった人間がそれを受け入れる物語です。人間たちは、「虫」の内面に人間がいることに気づきません。 5:46 AM May 10th webから
メイキング10の15…しかし、人間もまたその表面とは異なった「内面」をもっていて、それが伝えられないことで悩んでいるのではないでしょうか。だから、ほんとうは人間も「虫」なのです。グレゴールは、「虫」になり、すべての人間から「おまえが理解できない」と宣言されて初めてそのことに気づく 5:49 AM May 10th webから
メイキング10の16…部屋に閉じこもり、妹からの差し入れをドアから受けとりながら書き続けるカフカこそ「虫」なのです。「書く」ことを通じて、「虫」の孤独を知ること、それが「書く」ことがカフカに送り届けた最大の贈り物でした。だとするなら、それ以上のものを、他人に読まれることを…… 5:53 AM May 10th webから
メイキング10の17…求める必要などあったでしょうか。「虫」たらざるをえない、にもかかわらずそれを知ることのない人間たちの、すべての運命を見つめることができたと確信した時、「虫」たることの宿命に従うことが、カフカにとって自然であったようにぼくには思えるのです。 5:57 AM May 10th webから
メイキング10の18…最後にもう一つ話をさせてください。とても個人的なことです。およそ三十年前、ぼくはデビュー作の『さようなら、ギャングたち』という小説を書きはじめようとしていました。準備はできていました。なにを書くかも決まっていました。でも、一つだけわからないことがあったのです 6:00 AM May 10th webから
メイキング10の19…それは、「誰に向かって書くか」ということでした。それがぼくにはわからなかった。思えば、その頃のぼくは頭がイカレていました。その十年前にみんなの前から姿を消し、連絡をとっている友人は一人きり。小説を書かなければ死ぬしかないと思い詰めて書き始めたのです。 6:02 AM May 10th webから
メイキング10の20…ぼくのことなど誰も興味がない。ぼくがなにかを書いたって読みたいやつなんかいるはずがない。そんなことばかりが頭に浮かび、部屋を歩き回り、犬みたいに吠え、また原稿に向かう。しかし、何行か書くと、不安のあまり歯ぎしりする。もうダメかもしれないと思った時のことです。 6:06 AM May 10th webから
メイキング10の21…深く影響を受けていた詩人の吉本隆明さんのことが思いうかびました。「あの人ならきっと理解してくれるにちがいない」。なんとなく、いや確信に近い気持ちで、突然、思ったのです。そしたら、書けた。そして、ぼくは「この世にたった一人の読者」に向かって書き始めたのでした。 6:09 AM May 10th webから
メイキング10の22…書き上げられた『さようなら、ギャングたち』は佳作入選で、ほとんど話題を呼びませんでした。どうしよう、とぼくは思った。これ以上なにをすればいいのだろう。数カ月後、突然、吉本隆明さんが当時の文芸時評で、『さようなら、ギャングたち』をとりあげてくださったのです。 6:12 AM May 10th webから
メイキング10の23…出版社が「吉本さんがとりあげてくれたから売れるんじゃないか」といって単行本化が決まったのは、その後でした。たったひとりで、たったひとりの読者に書いた小説は、そのたったひとりの読者にだけ届いていたのです。読者は、ひとりでいいのです。それがどんなひとりであろうと 6:16 AM May 10th webから
メイキング10の24…今晩は、ここまで。いいたいことはいくらでもあります。でも、またにします。『「悪」と戦う』の発売まで、あと三日ほどになりました。明日からは、この小説について、話していくつもりです。ありがとう、聞いていただいて。感謝してます。 6:18 AM May 10th webから
そう思います。 RT @trokuro米国在住者です、楽しく拝見しています。先生の今日のお話を「小説を読む書く行為の本質は、読む・書く行為(運動)自体の中にある」と受取りました。愚問ですが、「発狂」しないで書けることを担保するのは「言葉」という「他者」が入る込むからでしょうか。 6:32 AM May 10th webから
今日の予告編1…子どもたちはもう寝ました。明日の遠足が楽しみでずっと興奮していたようでしたが。運動会・誕生会といった行事の前日になると必ず発熱するしんちゃんも、とりあえず元気なようです。雨があがるといいのだけれど。 4:21 AM May 11th webから
予告編2…ずっと続けてきた「メイキング」も今夜で11夜目です。日付が変わり12日になると本の「搬入」、13日には、大きな書店の店頭に『「悪」と戦う』が並ぶはずです。そして、14日が正式な発売日。みなさんに読んでもらえる日が近づいてきました。とてもとても楽しみです。 4:24 AM May 11th webから
予告編3…今日から3夜は、『「悪」と戦う』という小説について直接話すことにします。もちろん、ひとりの読者としていうなら、小説を読む時には余計な情報はなにも聞きたくない。それが作者のものであっても! でも、大丈夫。ここでなにを聞いても、この小説を読む楽しむが減ることはないはずです。 4:28 AM May 11th webから
予告編4…小説であればどんなタイプのものでも、単純な恋愛小説でも、古典的な名作でも、ファンタジーでも、読者を厳しく選別する芸術小説でも、「私」小説でも、なんでもぼくは好みます。ぼくには、それらの外見上の違いより、「小説」としての共通性の方が興味深いのです。もちろん、書く場合でも。 4:32 AM May 11th webから
予告編5…『「悪」と戦う』は、ぼくにとっても初めてのタイプの小説でした。ある意味で、まったく偶然に、この小説はできたのです。一つの、どうしても忘れられない事件と共に。では、24時に。 4:36 AM May 11th webから
メイキングオブ『「悪」と戦う』11の1…『「悪」と戦う』には、ふたりの少年、いや幼児が登場します。そして、彼らはある避けられない理由で、正体不明の「悪」と戦わざるをえなくなる。この「ランちゃん」と「キイちゃん」という兄弟は、子どもたちを、れんちゃんとしんちゃんをモデルにしています 5:02 AM May 11th webから
メイキング11の2…わたしは、自分の子どもたちをモデルにした小説を書くつもりなどありませんでした。わたしは、毎日、子どもの世話をしたり、相手をしたり、彼らを眺めたりして、それだけで充分だったのです。およそ、子どもというものは一瞬も休まず、日々、変化してやまない。それを追いかける… 5:06 AM May 11th webから
メイキング11の3…彼らを追いかけるだけで充分だったのです。彼らが、目の前で、ことばというものを覚えてゆく様、人間以前の存在が、徐々に人間らしくなってゆく様を眺めているだけで、飽きることはありませんでした。書くことは他にも、いくらでもあったのです。だが、ある日、わたしは不意に…… 5:09 AM May 11th webから
メイキング11の4…気づいたのです。それは、おそらく、およそあらゆる親が自分の子どもたちを眺めていて気づくこと。つまり、自分の「死」についてです。不思議なことに、父が亡くなった時にも、母の心臓が鼓動を止めた時にも、悲しくはあっても、それは自分の「死」とは関係のない出来事でした。 5:13 AM May 11th webから
メイキング11の5…けれど、まさに「生」のさなか、生命力そのものである、子どもたちを見ていると、彼が自分の年齢に達した時、わたしはもうこの世に存在しないのだという思いに呑み込まれそうになっている自分に気づくのです。風呂上がりに鏡を見て、ギョッとします。わたしの父親が映っている。 5:17 AM May 11th webから
メイキング11の6…十年以上前に亡くなったはずの父親は疲れ果てた顔をして、幼い頃のわたしを抱いているのです…もちろん、それは勘違いです。わたしが、しんちゃんを抱いて立っているのです。わたしは、その「父とわたし」が「わたしと息子」にあまりに似ていることに驚きます。時間はそうやって… 5:20 AM May 11th webから
メイキング11の7…折り返されるのかもしれませんね。とりわけ、六十近いわたしにとっては、子どもたちは、生命と死の両方を持って近づいてくる天使のようなものだったのです。わたしが、彼らをモデルにした短編を書いたの、その頃でした。それが何なのわからないまま、大きな手応えがあったのです。 5:25 AM May 11th webから
メイキング11の8…もしかしたら、大切ななにかが書けるかもしれない。そんな予感がしました。焦ってはならない。それがどうしても必要なものなら、必ずそれは生まれるのです。わたしは、なかなか言葉を話すようにならないしんちゃんをダッコしながら、用心深く、耳を澄ましていたのです。そして… 5:29 AM May 11th webから
メイキング11の9…わたしは、「ランちゃん」と「キイちゃん」以外の、もうひとりの登場人物に出会うことになったのです。そのことをうまく説明することできません。説明できないから、小説を書くことになったのですから。わたしは、いつも買い物に行っているスーパーで「彼女」に出会ったのです。 5:33 AM May 11th webから
メイキング11の10…れんちゃんと同じか一つ年上の女の子だ、とわたしは思いました。とても可愛い格好をした女の子はわたしに背中を向けていて顔は見えませんでした。その時、わたしは異様なことに気づきました。店内に、溢れるほど買い物客がいるのに、なぜか彼女の周りだけが空っぽなのです。 5:37 AM May 11th webから
メイキング11の11…彼女が進むと、その「真空」も前進します。まるで、特別な空間が彼女の周りをおおっているようです。彼女は不規則に、まるで酔っぱらっているように店内を進んでゆきます。なのに、不思議なことに、誰も彼女の方を見ようとしないのです。まるで、そこには誰もいないかのようです 5:40 AM May 11th webから
メイキング11の12…わたしの背後で、誰かが女の子の名前を呼びました。彼女はゆっくり振り返り、わたしの後ろにいる、おそらく母親の方を見ようとしました。彼女の顔が見えました。もしかしたら、彼女の視線とわたしの視線は交わったかもしれません。わたしは突っ立ったままでした。どのくらいの… 5:44 AM May 11th webから
メイキング11の13…時間がたったのでしょう。わたしが彼女の顔を見ていた時間は3秒か5秒ぐらいの間だったかもしれません。母親は彼女に近寄り、すぐに店から出ていきました。全部を合わせても1分もなかったかもしれない。母子が出ていった途端、店内に漲っていた緊張が緩んだのがわかったのです 5:50 AM May 11th webから
メイキング11の14…わたしは頼まれていた買い物を終えると家に戻りました。玄関を開けると、出迎えに出てきたしんちゃんが「だっだっ」と言いながらわたしに抱きつきました。その時、わたしは、この『「悪」と戦う』という小説が、もう、最初から最後まで出来上がっていることに気づいたのです 5:52 AM May 11th webから
メイキング11の15…やはりうまく説明することはできないのかもしれませんね。わたしは、ある特殊な顔をした女の子に出会ったのです。その顔は、わたしの中に落ちて、一瞬で小説になりました。小説を書くことは、それほど難しくはありませんでした。なぜなら、中から掘り出すだけでよかったからです 5:58 AM May 11th webから
メイキング11の16…いや、ほんとうは難しかったのです。わたしはずっと、自分に、そのことを書く「権利」があるのだろうか思っていました。わたしは、ほんの数秒、彼女を見ただけなのに、どんな人間なのか、どんな苦しみを感じているかも知らないのに、わたしの小説の主人公にしてしまったのです 6:02 AM May 11th webから
メイキング11の17…彼女はモデルですらありません。わたしは、なにひとつ彼女について知らないのですから。けれども、彼女がいなかったら、わたしの小説が存在しなかったことも事実なのです。小説の中では、完璧な事実の再現も、完璧なフィクションも、難しい。小説は、必ず現実に尻尾を掴まれる。 6:06 AM May 11th webから
メイキング11の18…わたしたちは現実の誰かのことを書きます。たいていの場合、彼らの承認を得ずに。彼らには、「なぜ我々のことを書くのか。なにも知らないくせに」という権利があります。そして、彼らは常に正しいのです。彼らのその言明に対して、作者は反論することができません。 6:11 AM May 11th webから
メイキング11の19…だが、それでも、わたしたちは書くのです。もっとも遠く離れたものを、繋げることができるかもしれないという、唯一の希望を頼りにして。 6:15 AM May 11th webから
メイキング11の20…やっぱり、説明は難しいですね。いつもうまくいくわけじゃないんです。みなさん、最後まで聞いてくれてありがとう。 6:17 AM May 11th webから
具体的になにを書くかが決まっていたわけじゃありません。でも、何も迷わず、まるで図面があるみたいに書けました。 RT @ imadedede 最初から最後まで既に頭の中でできている小説を書くってどんな感じなんでしょうか。なんだか凄いことが起こってそうですが、うまく想像できません。 6:44 AM May 11th webから
そのように書かれなければならないと思います RT @k6ou 魯迅は小説を書くたび「なんで私のことを書いた」と友人を失ったけれど、魯迅は彼等のことを書いたつもりはなかったという話を読んだ (略)女の子の話も彼女自身を書いたのではなく、世界のある側面をつかむ為の入口のように 7:04 AM May 11th webから
そろそろ寝ます。みなさん、ありがとう。今日は、しゃべりながらい自分の中で強くブレーキをかけているものがあったようです。覚醒してなければならないけれど、覚醒しすぎても、「演奏」は難しいです。あるいは、あとは小説を読んでもらうだけと思っているせいかもしれません。あと2夜です。おやすみ 7:11 AM May 11th webから
今日は子どもたちの保育園の遠足。奥さんは早起きして「ウルトラマン・ダダ・バルタン星人」のキャラ弁当を作り、しんちゃんは満面の笑顔。保育園では、「出待ち」するお母さんたち(&ごく少数のお父さん)が手を振る中、シカ組さんとリス組さんが旅立っていきました。行ってらっしゃい! 4:42 PM May 11th webから
今日の予告編1…日付が替わり13日になると、大きな書店の店頭に『「悪」と戦う』が並んでいるはずです。メイキングもあと2夜です。なんだか速いですね。昨日、何人かの人から感想もいただきました。こういう時は書き手はどきどきします。もう本は書かれ、判断されるのを待っているだけなんですから 4:32 AM May 12th webから
予告編2…もっとも信頼している読み手の感想を読み、いままでいちばん遠くまで小説を届けることができたと確信しました。もう大丈夫。作品はすべて自分が産んだ子どもたちです。『「悪」と戦う』なら、ずっと遠くまでひとりで歩いていけるはずです。メイキングは彼らへ贈るはなむけでもあるのです。 4:38 AM May 12th webから
予告編3…今夜は、『「悪」と戦う』という小説の世界の成り立ちについて、それから、小説を終わらせることについて、話せたらいいなと思います。もっと個人的なことも話したくなるかもしれません。みなさんに話せるこの時間は、ぼくにとっても大切な時間でした。それでは、24時に。 4:41 AM May 12th webから
メイキングオブ『「悪」と戦う』12の1…スーザン・ソンタグは「二度読む価値のない本は、読む価値がない」と書いています。そうです。一度しか読まない本はたいてい、読む価値がなかったのです。でも、逆に、何度も繰り返し読む本があります。もちろん、ぼくにも、そんな本が何冊もあります。 5:01 AM May 12th webから
メイキング12の2…何十回も、いや何百回と読み返す本、ぼくはずっとそんな本が書きたかったのでした。でも、どうしてそんなことが起こるんでしょう。何度か読めば、物語も登場人物のセリフも、ことばのひとつひとつまで覚えているはずなのに。どうして、それでもまた、読み返したくなるのでしょう。 5:05 AM May 12th webから
メイキング12の3…それは、おそらく、その本が、ぼくたちの心を「チューニング」してくれるからではないかと思うのです。コンサートの前に、オーケストラが、オーボエのAの音に合わせて、楽器のピッチを合わせる、あの光景のように、日々の暮らしの中で、心のピッチが狂っているなと思える時… 5:08 AM May 12th webから
メイキング12の4…そんな時、目を閉じ、その本が発する静かなAの音に耳をかたむけていると、狂ったピッチが元に戻ってゆく…そういう本をぼくは大切にしています。物語や華麗なことばづかいではなく、そこに漂っている、背筋をぴんとさせるなにかを読むために、繰り返し、その本の頁を開くのです。 5:11 AM May 12th webから
メイキング12の5…たとえば、ぼくにとって、カルヴィーノの『まっぷたつの子爵』という本がその一つでした。イタリア中世、血なまぐさい時代に放り込まれた貧しい少年と、砲弾によって「善」と「悪」の二人に引き裂かれた子爵をめぐる、この少年文学の傑作を、いったい何度読んだかわかりません。 5:15 AM May 12th webから
メイキング12の6…ぼくはずっと、『まっぷたつの子爵』のような本を書きたいと思っていました。そんな小説が書けるようになるまで三十年近くかかったのです。そう、だから、『「悪」と戦う』は、少年文学といってもかまいません。誰よりも子どもたちに、ぼくは読んでもらいたいと思っています。 5:19 AM May 12th webから
メイキング12の7…『「悪」と戦う』はこんなお話です……登場するのは子どもだけ。ランちゃんという3歳の少年、ランちゃんの弟でことばをしゃべれない2歳のキイちゃん、それから、おそらくランちゃんより1つか2つ年上で顔に大きな障害を持つ女の子ミアちゃん、そして空を飛べるもう一人の女の子 5:25 AM May 12th webから
メイキング12の8…気がついた時、世界からすべての人影が消えています。なぜなら、「悪」がやって来て、世界を空っぽにしてしまったから。「世界」を取り戻すために、子どもたちは出発します。しかし、彼らは、どうやって「悪」と戦えば、「世界」を取り戻すことができるのか知らないのです。 5:30 AM May 12th webから
メイキング12の9…実は、書き始めた時、ぼくも、どうすれば、「悪」から「世界」を取り戻せるのか知らなかったのです。そんな馬鹿なと思われるかもしれませんね。でも、小説では、そういうことがよく起こるのです。作者はなにもかも知っているわけじゃありません。いや、知らない方がいいのです。 5:33 AM May 12th webから
メイキング12の10…なにが起こっているのかわからないからこそ、作者もまた登場人物たと同じように、生き残るために、その「世界」がどんな法則で動いているのか真剣に探ろうとする。耳をすまし、五感をとぎすませて、そこがどんな「世界」なのか知ろうとする。そこでは作者もまた読者にすぎません 5:37 AM May 12th webから
メイキング12の11…ランちゃんたちは、「悪」と戦い続ける。それがどんな戦いなのか、当人たちにも理解できない戦いが続くのです。もしかしたら、彼らは負けて、ついに、「世界」は取り戻せないのかもしれない。書き手であるにもかかわらず、ぼくは、時に不安になったりもしたのでした。 5:43 AM May 12th webから
メイキング12の12…いえ、不安はありませんでした。ぼくはずっと作品の中で鳴り響いている「A の音」に耳をすませていたのです。パソコンに向かい昨日まで書いた箇所を開き、最初から読み直してゆく。「現実」の世界にチューニングされていた心が、『「悪」と戦う』の「Aの音」に合わされてゆく 5:48 AM May 12th webから
メイキング12の13…そうです。ぼくが大好きだった本を読む時のように、自分が作り上げた世界であるのに、ぼくはその世界の「Aの音」にチューニングすることに、深い喜びを感じていたのでした。ぼくは、ランちゃんやキイちゃんたちに「世界」を取り戻させてあげたかった。「八百長」なしにです。 5:51 AM May 12th webから
メイキング12の14…「八百長」とは、作者が自分の世界の王として振る舞うことです。自分の作った物語だからといって、恣意的に介入する。それは、その作品を壊してしまうことになる。ぼくにできることは、登場人物たちの戦いを応援することだけでした。ぼくも、彼らの戦いに参加していたのです。 5:55 AM May 12th webから
メイキング12の15…最後に、彼らはあるものと出会います。それから、大きな結末がやってくる。そこでなにが起こるのかいちばん楽しみにしていたのは、そして不安に思っていたのも、書いている当人だったかもしれません。物語の最後のパートを書きながら、ぼくは三十年前のことを思い出していました 6:01 AM May 12th webから
メイキング12の16…その頃、デビュー作となる『さようなら、ギャングたち』という小説を書いていたぼくは、結末の部分にさしかかっていました。ぼくは、その物語がハッピイエンドで終わるべきだと考えていました。そしてその方向へ作品は進んでいるはずでした。しかし、ぼくは突然気づいたのです。 6:04 AM May 12th webから
メイキング12の17…ずっと『ギャングたち』から聴こえていた「Aの音」が聴こえなくなったのです。呆然として、けれども、書き進むしかありませんでした。ぼくは死に物狂いで「論理的にはこうなるはずだ」と考えて書くしかなかったのです。なにも聴こえなくなったベートーヴェンのように。 6:09 AM May 12th webから
メイキング12の18…最後まで「Aの音」は聴こえていました。登場人物たちは、彼らがたどり着くべき場所に送り届けることができました。ぼくは、彼らを誇りに思っています。『「悪」と戦う』が、みなさんにとって何十度となく読み返すことのできる本でありますように。聴いてくださってありがとう。 6:23 AM May 12th webから
「読まれるべきもの」だと思いますし、そうあってほしいです。 RT @nyannyannyaaaan @takagengen 今日も楽しかったです。小説を書いていると、結局どこにも届かないんじゃないのか、と不安になります。小説は書かれるだけでいいのだと高橋さんは思いますか? 6:38 AM May 12th webから
ぼくが小説でもっとも重要と考えている要素です。 RT @symphonycogito 興味深く読ませていただきました。高橋さんの感じる「Aの音」は、心のピッチであり、なおかつ、小説のピッチなのでしょうか? もっと言ってしまえば、小説になりうる基準なのでしょうか。 6:55 AM May 12th webから
では、そろそろ寝ます。みなさん、ご静聴ありがとう。明日が最終夜です。おやすみなさい。 7:14 AM May 12th webから
今日の予告編・1…こんばんわ。メイキングオブ『「悪」と戦う』も、今夜でお終いです。今日、本が店頭に並び始めたばかりなのに、ずいぶんたくさんの方から「読んだ」というお返事がありました。速いなあ。ほんとうは、静かにして、みなさんの読書の邪魔にならない方がいいのかもしれませんね。 4:41 AM May 13th webから
予告編2…こうやって出版の日に向かって一日一日期待を高めてゆくのは(いちばん楽しみにしているのは作者のぼくなんですから)、もしかしたら、昔を思い出しているからかもしれません。本を読み始めた頃、みんな「ああ、『洪水はわが魂に及び』の発売まであと何日だろう」なんて思っていたものでした 4:47 AM May 13th webから
予告編3…『「悪」と戦う』について必要なことはもう書いてしまいました。だから、今晩は、小説家はなぜ小説を書こうとするのか、をお話しするつもりです。たぶん、長くはならないでしょう。とてもシンプルなことだから。そして、最後は、ぼくの好きな詩人のことばを「全文引用」したいと思っています 4:52 AM May 13th webから
予告編4…いままでも一度、ル=グインを「全文引用」しましたね。ここで話されるのはぼくのことばじゃなくなったかまわない。もう言いましたよね。ぼくは、ことばが、この公共空間の海に贅沢に放流されるのを眺めるのが好きなのです。ある意味で、それは小説という形でしていることでもあるのですが。 4:55 AM May 13th webから
予告編5…では、あと数分ですね。24時に、お会いしましょ。 4:56 AM May 13th webから
メイキングオブ『「悪」と戦う』13の1…小説家は、ただ小説を書きたいから書くのです。ほとんどの小説家はそうであるように、ぼくもそうにちがいありません。けれど、少しだけ異なった言い方をできるような気がする時もあります。それは要するに、過去に贈られたものを未来へ贈りたいということです 5:02 AM May 13th webから
メイキング13の2…それは別に「ぼく」である必要もないのです。一つの暗い部屋で、ひとりの人間が死の恐怖に怯えている。誰も彼を慰めることはできず、彼は、自分はこのまま狂って死ぬのではないかとおののく。けれど、それはすべて彼の内側で起こっていることで、誰もそれを理解できないのです。 5:06 AM May 13th web
メイキング13の3…けれど、ある時、その彼の「内側」にことばが贈り届けられる。誰も知らないはずの、「内側」の扉を、外からなにかが押し広げて。そして、初めて、彼に安堵の夜が訪れるのです。およそ、小説のことば、文学のことばは、そのようなものであるべきだ、とぼくは考えているのです。 5:10 AM May 13th webから
メイキング13の4…死の恐怖に囚われた少年の、内側の堅い壁をこじあける、強い力。壁を壊し、震える少年を抱きとめることのできることば。ぼくもまた、そんなことばによって、救出されたひとりでした。だから、り願わくば、ぼくのか細いことばが、ばらばらに飛び散り、遥か未来どこかにいるはずの… 5:17 AM May 13th webから
メイキング13の5…少年の助けになることができますように…誰かに贈られたものによってぼくは生きた、だからぼくも、そのようなものを贈ることができるようになりたい、ぼくが小説を書きたいと思いつづけてきた最大の理由は、それなのかもしれません。『「悪」と戦う』がそんな小説でありますように 5:21 AM May 13th webから
メイキング13の6…これから先は「全文引用」です。でも、とても有名なことばでもありますね。リルケの「若き詩人への手紙」です。本屋に行けば文庫もある。でも、いいでしょう。路上演奏では他人の曲だって歌うのです。それに、いまや、誰でも知っているようなものではないのかもしれませんしね。 5:26 AM May 13th webから
13の7「あなたは、自分の詩がいいものなのかとわたしに尋ねます。わたしに尋ねる前は他の人たちに尋ねました。あなたは詩を雑誌に送り、他人の詩と比較なさった。そして、あなたの試作が編集者に拒まれると、不安を感じるのです。だから、わたしはそういうことを一切を止めるよう言おうと思います」 5:32 AM May 13th webから
13の8「あなたは外部を見ているのです。それは何よりもまず、いましてはならないことなのです。誰も、あなたを助けることはできません。誰も、決して。ただ一つ、方法があるだけです。深く考えなさい。あなたのもっとも深い場所で。あなたに書けと命ずる根拠があるかを。それがあなたの心の最も…」 5:38 AM May 13th webから
メイキング13の9「深いところで根を張り伸ばしているかどうかを調べなさい。書くことを拒まれたら、死ぬしかないと言えるかどうか、白状してごらんなさい。なによりもまず、夜の最も静かな時間に、ほんとうに書かずにはいられないのか、と自分に尋ねなさい。心のなかを掘って深い返事を探しなさい」 5:42 AM May 13th webから
13の10「そして、もしその返事が『イエス』なら、もしあなたがこの真剣な問いに、『ぼくは書かずにはいられない』と力強く返事をすることができるなら、あなたの生活をその必然性に従い建てなさい。あなたの生活は、その最もつまらない、最も取るに足りない瞬間にいたるまで、そのやみがたい心の」 5:47 AM May 13th webから
13の11「動きのしるしになり、証言にならなければなりません。自然に近づきなさい。、あなたが見、体験し、愛し、失うものを、最初の人間のようになって言いあらわす努力をなさい。恋愛詩を書いてはなりません。最初は、よく知れわたった月並みな形式はお避けなさい、そういうものこそ…」 5:51 AM May 13th webから
13の12「むずかしいものなのです。たくさんの輝かしい作品がある場所で独自なものを産み出すには、大きな成熟した力が必要です。だから、一般的な主題を避けて、あなた自身の日常生活が提供する主題を選びなさい。自分の悲しみや望み、あぶくのような思い、そして見知らぬものへの信仰を描きなさい 5:56 AM May 13th webから
13の13「これらすべてのことを、心からの静かな謙遜と誠実をこめて、描きなさい。そして、自分の心を言いあらわすためには、あなたの周囲の事物、あなたの夢の形、あなた自身の思い出を使いなさい。もし自分の日常が貧しく見えるなら、日常を非難しないで、自分を非難なさい。自分は優れた詩人…」 6:00 AM May 13th webから
13の14「…ではないから、日常の豊かさを呼び出すことができないのだ、と白状しなさい。創造する人には、貧しさというものも、貧しくてどうでもよいというような場所もないのです。もしあなたが牢獄につながれて、牢獄の壁が世の中のざわめきをすこしもあなたの五感に伝えることができなくとも」 6:03 AM May 13th webから
13の15「あなたには、あなたの幼年時代という、。貴重な、王者のような富、この思い出の宝庫があるではありませんか。そこへあなたの注意をお向けなさい。このはるかな過去の沈んだ感動を浮きあがらせるようにお努めなさい。そうすれば、あなたの個性は強くなるでしょう。あなたの孤独は広くなり」 6:05 AM May 13th webから
13の16「それはまるで、明るい住まいのようで、他の人々が起こす騒音はその住まいの遠くを通りすぎるだけでしょう……そして、この内部への転向から、自分の世界への沈潜から、詩が生まれ出るとするならば、あなたは、それがよい詩かどうか、と誰かに尋ねてみようとは考えないでしょう」 6:09 AM May 13th webから
13の17「あなたはまた、雑誌に、こうしたあなたの作品に興味を持たせようと試みたりもしないでしょう。なぜなら、あなたはこれらの作品を、あなたが生まれながらに持っているもの、あなたの生命の一片であり声であると考えるようになるはずだからです」 6:12 AM May 13th webから
13の18「芸術作品は、必然の結果になるものならば、よいものです。芸術作品が、いまわたしが述べたような場所からやって来たものであるかどうか、それを見るのが、芸術作品の判断で、それ以外に判断する基準はないのです。それゆえわたしはあなたにこう忠告するほかなかったのです、つまり……」 6:16 AM May 13th webから
13の19「深く考えなさい、あなたの生活が生まれてくる深みを吟味なさい。その時、あなたは、あなたの生活のみなもとで、創造しないではいられないかどうかという問いの返事を見いだすでしょう。その返事を、聞こえるがままに、解釈をしないで、受け取りなさい。もしかしたら、その時、あなたは…」 6:19 AM May 13th webから
13の20「芸術家とい天職を授かっていたことに気づくかもしれません。そのときは、その運命を引受けなさい、そして外部から来るかもしれない報酬のことは、けっして問題にしないで、その運命を、運命の重さと大きさとを、耐え忍びなさい」 6:21 AM May 13th webから
13の21「創造する人間はなりま独自の世界でなければなりません。そして、あらゆるものを、自分の中からと、自分がつき従っている自然のなかとに見いださなければならないのです」。以上、リルケが、ひとりの無名の若い詩人へ贈ったことばです。 6:25 AM May 13th webから
13の22…リルケは「書く」というおこないについて、こんな風に述べました。しかし、ぼくは、この「書く」は「生きる」と言い換えても同じではないかと思います。だとするなら、このことばは、「生きる」ことに呻吟するすべての人への贈り物ではないかと思うのです。外ではない、すべては内側に…。 6:28 AM May 13th webから
13の23…だから、「書く」ことも「読む」ことも、「生きる」ことと無縁ではない、無縁ではないどころか、「生きる」ことそのものだ…そのことを、あらゆる言語芸術は主張しているとぼくは思っています。なにより、小説こそは。これで、メイキング『「悪」と戦う』は終わります。ありがとう。 6:30 AM May 13th webから

コメントを残す

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です