『うわさのベーコン』 pp.65-66
わざわざ、体力の減る手術など受けてまで早く治そうとしなくても、普通にちりょうを受けていたら治っていたのものですが、手術をして下さいと医者に頼みました。
一回だけで、もう、グッタリしているのに、もう一度やって下さいと言っています。
この手術も成攻すると思います。
手術をしたら、また、グッタリしました。前よりもどんどん悪くなっている様な気がしてなりません。それは、私の見舞いにきて下さる方々も思っていらっしゃるでしょう。しかし、皆んな私の前ではそんな事を一口もおっしゃいませんでした。
せっかく助かる命も、私の我ヶままを通してもらって、先生に手術を二回もやってもらったお陰で、いずれ死ぬ人になってしまいました。私を世話して下さる人は大変でしょう。
私が死んだら、そう式(そうぎ)をして下さるのでしょうね。父、母、先立つ娘をお許し下さい。
私は死にました。死ぬ一日前に私の知っている人々が、ほとんど来て下さいました。その時は、まだ医者に私が死にそうとは誰も聞いていませんでした。皆んなが帰って後、しょうとう時間になり、もう、私は生きていけそうにもなれず、ブザーをおして看護婦さんを呼びましたが、看護婦さんが来られた時は、私はもう死んでいました。
家族が来たのがその後です。
私はそうしきをしてもらいました。その時、普段泣かない人も泣いていました。私はじょう仏できそうです。
おわり